かぜ症候群とは

はじめに

かぜ症候群は原因の大部分がウイルス感染であり,通常は自然に改善する予後良好の疾患ですが,高齢者では典型的な症状を欠くことや基礎疾患の増悪に関与しやすいことがあります。高齢者でのかぜ症候群の特徴および診断治療での注意点について述べます。

かぜ症候群の病態

1.病態と原因微生物

かぜ症候群は鼻腔から喉頭にかけての上気道の急性炎症の総称です。炎症の主座により, 鼻汁・鼻閉など鼻症状が強い鼻副鼻腔炎,咽頭痛など喉症状が強い咽頭炎,咳症状が強い急性気管支炎,症状がそれらのどれかに明らかには偏っていない状態である感冒に分けられます。

かぜ症候群はウイルスが原因微生物の80~90%を占め,ライノウイルスが30~50%と最も多く,その他にコロナウイルスパラインフルエンザウイルス,RSウイルス,ヒトメタニューモウイルスなども原因となります。飛沫感染と接触感染で伝播し,高齢者施設内などでは集団感染も報告されています。

2.基礎疾患への影響

高齢者では慢性の呼吸器疾患や心疾患,脳血管障害,糖尿病などの基礎疾患を有することが多く,かぜ症候群を契機にこれらの慢性疾患の急性増悪が起こることがあります。特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの慢性呼吸器疾患での急性増悪は呼吸不全を引き起こす可能性があり,その要因として最も多いのはかぜ症候群を代表とする気道感染です。さらに,ウイルス感染が二次性に細菌性気道感染のトリガーになることもあります。

また基礎疾患の有無にかかわらず,高齢者では各臓器の予備能が低下していることから,かぜ症候群の発症が脱水や電解質異常をきたすなど,全身性に影響を及ぼすこともあります。

かぜ症候群の診断

かぜ症候群は鼻汁・鼻閉,咽頭痛,咳,発熱などの臨床症状から診断しますが,高齢者では局所の気道症状や発熱が明瞭でないことがあるため注意が必要です。

治療における注意点

かぜ症候群は通常は自然に軽快するため,安静を保ち,水分や栄養補給の指導を行うことが 重要です。症状の緩和のために薬物による対症療法を行う場合がありますが,高齢者に対する処方には注意が必要です。

1.薬物療法の副作用

かぜ症候群のさまざまな症状を緩和するために,一般的には総合感冒薬が投与されることも多いですが,特に基礎疾患のある高齢者への処方では注意が必要です。鼻汁,鼻閉などの症状に対して配合されている第一世代抗ヒスタミン薬は,その抗コリン作用により,前立腺肥大症のある患者では排尿困難を悪化させます。リン酸コデインなどの中枢性鎮咳薬には便秘や腸閉塞,呼吸抑制や循環不全の増強などの副作用があります。また,葛根湯や麻黄湯などの漢方薬では,成分に含まれるエフェドリンによって心悸亢進や血圧上昇などをきたすことがあります。

2.抗菌薬の適応

かぜ症候群に対して抗菌薬投与は,原因の大部分がウイルス感染であるため無効であるだけでなく,下痢などの副作用もあり得ることから,高齢者に限らず基本的には不要です。基礎疾患がなければ,抗菌薬が必要となるのは中等症以上の鼻副鼻腔炎やA群溶連菌が検出された咽頭炎など,いくつかの場合に限られます。ただし,高齢者では肺炎との鑑別に注意するとともに,特に基礎疾患にCOPDや気管支拡張症などの慢性呼吸器疾患がある場合も慎重な対応が必要です。肺炎や急性増悪が考えられれば,ペニシリン系薬や耐性菌が疑われる場合はキノロン系薬などによる抗菌薬治療の適応になります。

高齢者の特徴をまとめますと以下になります。

上気道の局所症状や発熱に乏しかったり,典型的でないことがあります。また「風邪をひいた」として受診した場合でも,肺炎や感染症以外の疾患の可能性もあります。

脱水など全身状態に影響を及ぼすことがあり,日常生活動作の低下につながりやすいです。

基礎疾患の急性増悪の契機となる可能性があります。特に慢性呼吸器疾患がある場合は二次性に細菌性気道感染に進展することがあります。

症状緩和のための投薬による副作用が,基礎疾患や常用薬がある場合には特に出現しやすくなります。

参考文献

前田光一 臨床と研究・96巻12号2019年

田中敏博 日小医会報No.57

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