過活動膀胱とは

過活動膀胱(OAB)とは

「尿意切迫感を主症状として、頻尿あるいは切迫性尿失禁を伴う自覚症状症候群」と定義されています。

尿意切迫感とは、急に起こる、我慢できないような強い尿意のことであり、抑えきれない尿意のために「トイレに駆け込む」、あるいは「水を触ると急に我慢できない尿意が出現する」などと訴えられます。また、尿意切迫感のために我慢できず尿を漏らしてしまうのが切迫性尿失禁であり、女性OAB 患者さんの約 80%で切迫性尿失禁がみられるといった報告もあります。尿意切迫感や切迫性尿失禁は困窮度が高く、生活の質に大きく影響します。高齢者に多くみられ、70歳以上に限っては3~4人に1人がOABを有していると言われています。

治療

OABの治療として、行動療法と薬物療法が挙げられます。

  • 行動療法には、ダイエットや運動療法、飲水指導などの生活指導や、排尿記録に基づいて尿を我慢させることでOABを改善させる膀胱訓練、骨盤底筋訓練などの理学療法があります。効果面だけでなく安全性も高く、有用な治療法であると考えられていますが、わが国においては時間的な制約、人員的な問題などでOABの治療としてあまり普及していないのが現状です。
  • 一方、薬物療法はOAB治療の根幹を成しており、抗コリン薬とβ3アドレナリン受容体作動薬(β3刺激薬)が、『夜間頻尿診療ガイドライン』において推奨グレードA(強い根拠があり、行うように強く勧められる)に分類されています。日常診療で多く使用されている抗コリン薬とβ3刺激薬についてまとめてみました。抗コリン薬やβ3刺激薬による治療は、OABに対する効果が高いことは多くの臨床研究で示されていますが、その治療継続率は、1年の内服継続率が30%前後と低く、OAB診療における課題の一つです。副作用や内服しても効果が現れにくいことなどが、低い内服継続率の原因に挙げられ、その背景にはOAB症例の高齢化が考えられます。

    夜間頻尿診療ガイドライン第2版より引用

高齢者に対するOAB治療

  1. 基礎疾患に注意したOAB治療

  • 男性であればOABに前立腺肥大症、女性であれば腹圧性尿失禁や骨盤臓器脱などを合併することが多いため、これらの疾患の有無を確認して治療を行う必要があります。また、加齢とともに膀胱機能は低下することが知られており、排尿筋低活動のために残尿が多くなり、結果として頻尿症状(OAB症状)を訴える高齢者もみられ、このような患者さんにOAB 治療の標準治療薬である抗コリン薬やβ3刺激薬などを投与すると、排出障害をさらに悪化させることになり、尿閉などを引き起こすため注意が必要です。簡単な対策として、治療前に残尿測定を行うことで、ある程度鑑別が可能です。
  • また、心血管系の基礎疾患(心不全や高血圧)や運動機能低下、認知機能低下などによって、OABなどの症状がみられる高齢者も少なくなく、薬物治療に頼るだけでなく行動療法や、内科的側面からのアプローチも考えていく必要があります。
  1. 高齢者における多剤内服(polypharmacy)

  • 高齢者は複数の疾患を合併しており、多くの薬剤を内服している方もおられます。薬剤の多剤内服により有害事象も増えるため、安易な薬剤の上乗せは避けるべきです。
  • また高齢者は、抗アレルギー薬や抗うつ薬、抗不安薬などの抗コリン成分を含む薬剤を内服していることが多く、OABの標準治療薬である抗コリン薬を処方する際は服薬内容の確認が必須です(副作用が増強される危険性がある)。抗コリン薬の副作用として、口内乾燥や便秘に加え、最近では認知機能の低下も報告されており、注意が必要です。
  1. 薬物動態への配慮

  • 高齢者では薬物動態、とくに代謝の面で個人差がみられます。また若年者とは異なるため、薬剤開始時は少量で始め、安全性や効果を確認しながら緩やかに増量することが望まれます。とくに健康状態が脆弱な高齢者では、副作用が出やすく重篤化しやすいため、慎重な薬剤投与が必要です。

参考文献

松川宜久 URO-LO 2020 vol.25 no.02

朝倉博孝 篠島利明 排尿障害プラクティス Vol.28 No.1 2020

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