おとなの股関節痛

成人股関節疾患

大腿骨頭壊死症

病態

大腿骨頭の栄養血管である内側大腿回旋動脈の血流が障害され 大腿骨頭に骨壊死が生じる病態 血流が障害され、大腿骨頭に骨壊死が生じる病態です(図 1)。最大の荷重関節である股関節の機能が失われる難治性疾患で、外傷など壊死の原因の明らかな症候性大腿骨頭壊死症と、原因が明らかでない特発性大腿骨頭壊死症に分類されます。特発性大腿骨頭壊死症は、ステロイド薬による治療歴やアルコール愛飲歴のある患者さんに多いです。
骨頭壊死の発生だけでは疼痛は出現せず、荷重によって壊死骨が圧潰し、骨梁骨折や骨髄浮腫で発症します(図 2)。大腿骨頭の圧潰は関節軟骨の障害を導き、病期が進行すると変形性股関節症の変化を呈するようになります。
小児期に発生するペルテス病は、大腿骨近位骨端部の阻血性疾患です。

評価・治療

荷重部の壊死域の大きさは疾患の予後を決定する重要な因子で、単純 X 線像、MRI などで評価されます。
治療は、おもに年齢、病期と壊死域によって決定され、骨切りや人工関節置換術などが行われます。

参考文献
加来信広 整形外科看護 2019 vol.24 no.6 (587)

大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折

1.疾患概念

大腿骨頭壊死症と間違われやすい疾患に、大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折があります。1996年に提唱された比較的新しい疾患概念です。大腿骨頭表面の軟骨は軟骨下骨という梁と海綿骨という柱に支えられています。骨粗鬆症など骨の脆弱性を基盤として,これらの部分に骨折が生じることを大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折といいます。高齢者での大腿骨近位部の骨折は,頚部(内側,外側)や転子下がよく知られているが,骨頭軟骨下での発生も留意しておく必要があります。 

2.症状および所見

高齢女性で,骨粗鬆症や肥満傾向にある場合が多いですが,青年や壮年の方にも生じる場合があります。股関節を捻った,前屈みになった,長歩きをしたなどの軽微な外傷を契機に発症することが多いですが,全く先行する外傷がない場合もあります。発症時は,強度の痛みを訴えることが多く,歩行は困難となります。しかしながら,この痛みの度合いに比しX線では明らかな異常を認めないことが多いです。本骨折を疑った場合は,直ちにMRIを行うべきです。 

3.X線所見

発症直後は所見に乏しく,骨量減少の他は明らかな異常を認めないことが多いです。骨折部は,骨頭荷重部の不整像や,crescent signとして認められます。圧潰の進行のない症例では,2~3か月で骨頭軟骨下に仮骨形成による硬化像が出現します。

4.MRI所見

特徴的所見は,骨頭内のびまん性のT1でlow, T2でhighを示すbone marrow edema pattern です。これに加えて,Tl強調像で周囲の低信号よりもさらに低信号を示す不規則なバンド像を認めます。このバンド像は,骨折線とそれに伴う修復反応を示しています。ただし,大腿骨頭壊死症においても同様のバンド像を認めることが多く,鑑別が困難なことがあります。

5.治療

大腿骨頭壊死症とは違い骨折ですから,骨折の範囲が狭く骨頭が圧潰していなければ安静を保つことで治すことが可能です。骨頭が圧潰すると軟骨摩耗がすすみ人工股関節全置換術が必要となります。

急速破壊型股関節症

1.疾患概念

股関節破壊が急速に進行した疾患の総称であり,関節破壊が進行してはじめて診断が可能となります。主に高齢女性の片側股関節に発生し,発症時ほぼ正常であった股関節が6~12か月以内の短期間に急速に破壊をきたします。

2.病因・病態

大腿骨頭壊死症の病因は未だ不明です。病態は,簡潔にいえば骨破壊が骨形成をはるかに凌駕した状態と考えられています。近年,大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折が契機となり,発症するのではないかという説も提唱されています。高齢者の骨粗鬆化した骨頭に骨折およびそれに伴う小壊死巣が生じ,基盤にある極端な骨粗鬆化と修復能の低下,加えて骨吸収の亢進など特殊な条件下において,急速な破壊パターンを呈したものと推測できます。

3.症状および所見

臨床的特徴として,高齢女性に多い,明らかな基礎疾患がない,正常股関節に発生する,片側性が多いなどがあります。発症時の股関節痛は,軽度から強度まで様々ですが,一般的には発症時はX線上著変を認めません。その後,数か月の経過で症状は増悪し,特に安静時痛も強く疼痛のため不眠を訴えることもあります。運動痛も強く歩行も極端に障害され,ADLの障害が著しいです。通常,血液検査では異常を認めませんが,軽度のCRPの上昇(1.0前後)を伴うこともあります。 

4.X線所見

発症時のX線像では,骨頭の骨粗鬆化以外に著変を認めません。この時点で,本症を確定することは困難です。経過とともに関節裂隙の狭小化と骨頭の扁平化が進行し,1年以内の経過で骨頭の2/3~1/2が消失します。通常の変形性股関節症と異なる点は,荷重部に軽度の硬化像を伴うことはありますが,骨棘形成などの増殖性変化をほとんど認めない点です。

5.MRI所見

本疾患に特徴的なMRI像として確立されたものはありませんが,早期においては骨頭上外側部を中心にTI low T2 highのbone marrow edema像が認められるという報告や,軟骨下骨折を示すT1強調像でのバンド像を認めたという報告があります。先に述べた,大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折との関連も示唆されています。

6.治療

保存的方法ではあまり効果が期待できず、人工関節置換術の手術をされる場合がほとんどです。

一過性大腿骨頭萎縮症

1.疾患概念

一過性大腿骨頭萎縮症は,中年男性や妊娠女性に好発する原因不明の疾患です。その病像は特異的で,X線上骨頭から頚部にかけて骨萎縮を認め,MRIではびまん性のTlで低信号, T2で高信号の骨髄浮腫像(bone marrow edema pattern)を示します。症状は一過性で,6~8か月で自然治癒するとされています。 

2.病態

本疾患の病態として,一過性の虚血,閉鎖神経の圧迫,骨折,Sudeck atrophyの一種など,色々な説が提唱されてきたが,詳細は未だ不明です。

3.臨床像と画像所見

中年男性や妊娠女性に好発するとされています。片側発生が大多数で,股関節痛と歩行障害を訴えます。血液学的にはほとんど異常を示さないことが多いです。単純X線写真が特徴的で,大腿骨頭の骨萎縮を認めますが,関節裂隙の狭小化などは伴わないです。またMRI像も特徴的で,骨頭から頚部にかけてびまん性の骨髄浮腫像を認めます。ほとんどの症例は,6~8か月で自然治癒するとされていますが,稀に頚部骨折をきたした症例も報告されています。また,膝,肩,足関節など他の関節に再発する症例(transient migratory osteoporosis)も報告されています。

参考文献

山本卓明 岩本幸英 MB Orthop. 24(2) : 9-16, 2011.

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