肘の痛み

上腕骨外側上顆炎

上腕骨外側上顆炎は,繰り返される手関節背屈や前腕回内外動作によるストレス刺激やオーバーユースによって生じる短橈側手根伸筋(ECRB)腱の腱付着部症です。上腕骨外側上穎炎は年間の発生率は1~3%であり,日常診療上良く遭遇する疾患です。20歳台の若年層では発症率が低く,好発年齢は30歳台後半から50歳台です。テニスやバドミントンなどのラケットスポーツでの上肢障害では,上腕骨外側上顆炎の発症頻度がもっとも高い傾向にあります。症状は手関節背屈時やタオルを絞るときなどに生じる肘外側部痛や外側上顆を中心とした圧痛です。

上腕骨外側上顆炎の障害部位は短橈側手根伸筋(extensor carpi radialis brevis:ECRB)腱の近位付着部で,難治例といわれる例では腕橈関節内に病変がみられることが多いです。疼痛のおもな原因はECRB腱付着部症で,腱付着部の変性や腱線維の断裂に加えて,腕梼関節内の滑膜ヒダや関節軟骨変性,輪状靱帯の損傷などがあります。長期の慢性疼痛例は,中枢感作が関与していることがあります。

保存治療としては非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服や外用薬,ステロイドの局所注射,テニス肘用バンドの装着,手関節,指のストレッチや温熱療法などの理学療法,日常生活動作の指導(物を挙上するときには前腕回内位では無く,回外位で把持する→具体的には脇を締め手のひらを上に向ける)などが施行され,約90%の症例が保存治療に反応すると考えられています。しかし保存治療に抵抗する症例に対しては,上腕骨外側上顆部を切開しECRB腱の起始部の病巣部を切除するNirschl法,輪状靱帯の部分切除とsynovial fringeの切除を追加するBoyd法,そして肘関節鏡視下病巣切除術などの手術治療が施行されています。

手術に変わる治療としては,多血小板血漿(platelet rich plasma:PRP)による治療が注目されています。その有用性についてはPRPを施行した群とステロイドの局所注射や理学療法のみを施行した群と比較して疼痛,機能の有意な改善が見られたとの報告がある一方,生理食塩水の注射との比較で疼痛,機能の改善に有効性を認めなかったとの報告も見られます。現在のところ保険適用外診療であるため今後,効果的な投与方法が確立され,安定した成績が報告されることが望まれます。

 

テニス肘バンド装着

参考文献

池上博泰 LOCO CURE voL6 no.1 2020

変形性肘関節症

概要

肘関節の変形性関節症は,他の関節と同様に,関節軟骨が老化による退行変性や使い過ぎによる摩耗を生じるとともに骨棘形成を生じて疼痛や運動制限を生じます。関節軟骨の変性に比べて骨棘形成が強く,遊離体や拘縮を生じる特徴があります。初期から中期は骨棘の衝突による伸展・屈曲終末可動域での疼痛が特徴的で,末期になると著明な可動域制限に加えて中間可動域での疼痛も認めるようになります。さらに,関節の尺側近傍を走行する尺骨神経を骨棘が圧迫して肘部管症候群を合併することがあります。

治療

保存療法が第一選択であり,局所安静,薬物療法,注射療法,理学療法を行います。関節内遊離体によるロッキング症状を認める場合,尺骨神経麻痺を合併する場合,保存療法に抵抗する疼痛や運動制限が持続する場合に手術療法を検討します。低侵襲である鏡視下手術にて大部分の症例は対応でき,鏡視下に骨棘切除や遊離体摘出を実施します。

参考文献

岩堀裕介 薬局 voL69 no.12 2018

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