手指の外傷

基節骨骨折・中手骨骨折

基節骨骨折・中手骨骨折は上肢の骨折の中でも 頻度の高い骨折です。また,保存療法の適応となる例が多いです。リハビリテーションに際しては,基節骨骨折はPIP関節の屈曲拘縮を生じやすい点に,中手骨骨折はMP関節の伸展拘縮を生じやすい点に注意が必要です。したがって手指の基本的固定位はMP関節屈曲位, PIP関節伸展位でこれを安全肢位safety positionと呼びます。保存的治療としてナックルキャストが広く使用されています。

ナックルキャスト

ナックルスプリント

ナックルキャストによりMP関節を70~90°屈曲位で固定し,PIP関節およびDIP関節は固定せず早期から自動運動を行わせることで,骨片の整復とともに機能的な回復が得られるとされ,有用な固定法として広く使用されています。

Mallet finger

球技で多発するいわゆる“つき指”です。DIP関節が屈曲変形して基部背側に限局性の皮下出血や圧痛があります。末節骨基部背側に骨折が生じる場合(骨性),伸筋腱が断裂する場合(腱性)があります。

DIP関節を伸展位にすると整復される場合は伸展位またはやや過伸展位で5~6週外固定します。骨折骨片が大きめで末節骨全体が掌側へ転位している場合は手術療法の適応となります。

手指関節側副靱帯損傷(PIP・MP関節)

はじめに

手指の外傷としてあげられる「手指側副靱帯損傷」は,スポーツや日常生活で比較的発生頻度の高い手の外傷です。しかし「突き指」や「捻挫」として軽視されがちで,現場での安易な判断により放置されることがあります。疼痛や関節不安定性が残り,陳旧化して治療に難渋することもあり注意を要します。

診断

手指側副靱帯損傷の診断において,受傷機転,疼痛部位,腫脹部位,圧痛点,内出血の有無が重要となります。X線撮影は正確な正面像,側面像,(必要に応じて斜位像)によって骨折の有無を確認します。靱帯の損傷程度を確認するうえでストレス撮影や関節造影,超音波検査が診断に有用です。

1.PIP関節側副靱帯損傷

①ボールでの突き指が多く,野球やソフトボール,バスケットボール,バレーボール,ドッジボールでの受傷が多いです。受傷指は小指,環指,中指の順に多く,橈側側副靱帯損傷が多いです。

2.MP関節側副靱帯損傷

a)母指MP関節尺側側副靱帯損傷

skier’s thumb(スキーのストックによる損傷が多い)と呼ばれています。スキーのストック,野球のバットなどで拇指MP関節に橈側への強いストレスがかかって発症します。Stener損傷を合併することがあります。Stener損傷とは,拇指MP関節が過度の外転によって断裂した尺側側副靱帯の遠位端が中枢側へ反転し,断裂靱帯を乗り越えた拇指内転筋腱膜が戻ってくるときに,その近位縁表層に乗り上げてしまい,靱帯断端が反転したままの状態になることです。皮下出血があり,著明な不安定性を伴って橈側へ偏位した状態のときに疑われます。

Stener損傷 手術適応となります

b)指MP関節側副靱帯損傷

①ほとんどが橈側靱帯損傷で,尺側靱帯断裂は稀です。指の強い尺屈ストレスによって発症します。

②指MP関節側副靱帯損傷は,靱帯付着部の剥離骨片を伴わない場合もあり,見逃されて陳旧化してしまうことが多いです。

③手背全体の腫脹を伴うことが多く,損傷靱帯を直接触れにくく圧痛部位を確認しにくいです。MP関節の背側橈側に圧痛が確認されます。

治療

1.指PIP関節側副靱帯損傷

①側方動揺性が20°以下であれば,不全断裂として保存療法を行いますが,完全断裂であるとしてもまず全例保存療法を試みるべきです。受傷時に完全に側方に亜脱臼した場合でも,整復後に側方ストレスをかけない正面X線像で,橈側尺側に関節裂隙の差がなく,愛護的ストレスにて安定していると判断された場合には,断裂した側副靱帯が元の位置に整復されていると考えられ,保存療法での治癒が見込めます。

②副子固定:受傷から1~2週間PIP関節伸展位固定を行います(疼痛を伴う場合には2週まで延長します)。この際固定範囲はPIP関節のみとし,健側指で患側PIP関節を掌側背側から押さえながらDIP関節の自動屈曲伸展を行わせ,側索の癒着を防止します。

③buddy taping(隣接指テープ固定):副子固定終了後に行います。1ヵ月間buddy tapingを行いながら積極的に自動可動を指導します。

buddy taping

④靱帯癒合までは6~8週を要します。

2.MP関節側副靱帯損傷

a)拇指MP関節側副靱帯損傷

①健側と比較して橈屈尺屈ストレスで不安定性がないものや,剥離骨折の骨片の転位のないものは保存療法が適応になります。

②不安定性の強いものは手術適応となります。

③拇指MP関節ギプス固定3週間。

④拇指MP関節は伸展拘縮を起こすことが多く,ギプス除去後に可動リハビリを要することがあります。

b)指MP関節側副靱帯損傷

①新鮮例では保存療法で治癒が見込めますが,陳旧化した場合には手術療法となります。

②新鮮例でも,拇指MP関節のようにStener様損傷の場合には手術となります。

③保存療法はMP関節屈曲位でのギプス固定(ナックルキャスト)を4週間行います。

指MP関節の屈曲伸展には制限なく可動リハビリを行います。他の側副靱帯損傷と同様に靱帯修復まで6~8週を要します。

参考文献

多田薫ら MB Med Reha No.244:41-47,2020

後藤均ら 臨床スポーツ医学:Vol.35,No.3(2018-3)

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