こどもの骨折

はじめに

小児の骨折は成人よりも骨癒合(骨折の治り)が早く,一般的に予後がよいと思われがちです。しかし,成長に伴う変形や骨長差の出現等,小児期特有の問題も多く,不適切な治療が行われることで後遺症が残り,補正手術が必要となることがあります。また,年齢による生理的な変化や軟骨成分が多いために単純X線像ではっきり描出されない領域があり,診断・治療に難渋することもあります。小児と成人の骨折の違いに触れ,小児に頻度の高い骨折や小児特有の骨折について解説します。

成人骨折と小児骨折の違い

(1)骨端線

小児と成人の最も大きな違いは,小児は骨が伸びる,つまり成長することです。その成長を担うのが骨端線であり,骨端線では軟骨細胞が分化し,骨へと置換されます。その過程で軟骨細胞は肥大化しますが,力学的強度は低下します。そこに強い外力が直接的または間接的に加わるとずれが生じ,骨端線損傷となります。骨端線損傷はSalter Harrisの分類が広く用いられ,図1のように type I~Ⅵに分類されます。Type Ⅰは骨端線での離開,Type Ⅱは骨端線から骨幹端部にかけての損傷でこれらは予後が良いです。Type Ⅲ,Ⅳは関節面に達するため,正確な整復と固定が必須となります。Type Ⅴは圧挫によって生じ,骨端線閉鎖が起きてから気づかれることも多いです。Type ⅥはRangにより提唱され,Perichondral ringへの直達外力により生じます。これらが治癒する過程で骨端線が早期閉鎖することがあり,変形や成長障害の原因となります。その他に,骨変形応力に対して弾力性や橈屈性があり、骨膜が厚いために骨皮質の連続性が一部保たれる不全骨折の形をとることがあり,若木骨折や膨隆骨折や急性塑性変化があります(図2)。後者は骨全体を撮影しなければわからないことがあるので見逃さないように注意します。

図1 Salter-Harris分類

図2 骨折の形態

(2)自家矯正

もうひとつ,小児骨折の大きな特徴として自家矯正が挙げられます。骨が元の形態に戻ろうとする機構が働きます。興味深いことに,部位や年齢によっても自家矯正の程度,つまり角状変形の許容範囲が異なります。たとえば5歳以下の上腕骨であれば,内反70度までは問題ないとされているのに対し,前腕では若年者でも15度までとされています。したがって,部位による許容角度を理解し,治療方法を選択する必要があります。

(3)リハビリテーション

成人の骨折では関節拘縮が起こりやすいため,強固な固定性を得たうえで,早期にリハビリテーションを開始します。しかし小児の場合は拘縮が起こりにくいため,長期間固定後でも特別なリハビリテーションを行わずとも,速やかに正常な関節可動域が得られることが多いです。したがって,正確な整復位の保持が重要となります。

疫学

小児の長管骨骨折では,骨端線損傷:骨折=3:7の比率で生じます。上肢では橈骨遠位,手指骨,上腕骨の順に多く,下肢では足関節周囲の脛骨・腓骨,大腿骨の順に多いです。また受傷原因として,幼少期は転倒,転落によるものがほとんどですが,年長になるにつれ,スポーツ活動中の骨折が増加します。

各論

(1)上腕骨顆上骨折・上腕骨外顆骨折

小児では橈骨遠位端骨折に次いで肘周囲骨折の頻度が高いです。転位(骨折のずれ)の少ないものはギプスやシーネで固定し,保存的治療を行いますが,転位が大きい場合は手術を行います。神経血管損傷コンパートメント症候群を合併することがあるので注意が必要です。特に骨折の転位が大きい場合,正中神経,橈骨神経,尺骨神経のいずれもが骨折部に嵌入し得るため,筋力やしびれ,固有知覚領域を確認し,麻痺の有無を評価します。コンパートメント症候群とは筋区両の内圧が亢進し,筋肉の壊死と神経損傷を招く状況です。特に肘周囲骨折では前腕屈筋群の筋区画内圧が高まり,Volkmann拘縮とよばれる状態に陥ることがあります。上腕骨外顆骨折は転位の少ないものは保存療法を行いますが,先述したSalter-Harris TypeⅢあるいはⅣの骨端線損傷に相当するため,手術治療が必要となることが多いです。

上腕骨顆上骨折

上腕骨外顆骨折

(2)Monteggia骨折

尺骨近位1/3の骨折橈骨頭脱臼を合併する骨折をMonteggia骨折とよびます。ほとんどの症例で尺骨骨折を整復すると橈骨頭脱臼が整復されます。骨折部の安定性を確認し,問題がなければ保存療法,不安定であれば経皮的に鋼線固定を行います。変形が残存すると遅発性橈骨頭脱臼を生じるので注意が必要です。

Monteggia骨折

(3)足関節骨折

足関節骨折は足関節内外果の骨折が多いですが,骨端線が閉じ始める中学生頃より,複雑な骨折形態を示すTriplane骨折が生じます。脛骨遠位骨端線は後内側から前外側へ向かって閉鎖するため,骨端線の中でも強度に差が生まれ,その境界部で骨端線損傷が起こります。この中でも冠状面,矢状面, 軸状面で骨端線損傷が起きたものをTriplane骨折とよびます。関節内骨折であり,転位が2mm以上あれば手術適応となります。

Triplane骨折

参考文献

岡田慶太 芳賀信彦 骨折治療の最前線Vol.27 No.6 2018.6

冨士川恭輔 鳥巣岳彦 骨折・脱臼

 

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