こどものスポーツ傷害~大人との違い~

一般に「スポーツ傷害」は大きな外力によって生じる,いわゆるけがとしての「スポーツ外傷」と,軽度の外力が繰り返し加わることによって生じる「スポーツ障害」とに大別されます。

ジュニア期(小学生から中学生)に発生しやすい「スポーツ傷害」は、いわゆる慢性障害が多いです。ジュニア期は発育発達の過程において成長期に相当しますが、運動器の特徴をみると、成人の運動器を小型化したものではなく、成長期にみられる解剖学的特徴などにより、成人と大きく異なっています。このため、成人に発生しやすい障害とジュニア期に発生しやすい障害には異なる特徴がみられます。成長期における身長の増加は、主に骨の成長によるものであるが、それらは骨の骨端部に存在する比較的柔らかい組織である成長軟骨層となります。そしてこの軟骨部は力学的ストレスに対して弱いです。これらの骨端部(成長軟骨)の成長に対し、筋・腱の発達が追い付かないために相対的に短縮することとなり、結果、緊張が強まることで柔軟性の低下が起こります。これらの症状をovergrowth syndromeと総称されています。それにより、成長軟骨層に付着する腱が筋肉の収縮(張力)などにより過剰に引っ張られ、繰り返されるストレスなどによって、特に軟骨の付着部において障害が発生します。これらの骨と筋・腱の発育発達段階でみられる特徴から、ジュニア期の障害の特徴として、筋肉や腱などの傷害、例えば肉ばなれやアキレス腱断裂などは少なく、骨端部に存在する軟骨や関節軟骨の損傷、その他、疲労骨折などが起こりやすいことが示されています。

1.スポーツ傷害

一般にスポーツ傷害は大きな外力によって生じる,いわゆるけがとしての「スポーツ外傷」と,軽度の外力が繰り返し加わることによって生じる「スポーツ障害」とに大別されます。

a)スポーツ外傷

総論

①肉ばなれ・筋挫傷

筋は柔軟性に富んでいるため,微細な筋断裂である肉ばなれは小学生ではほとんど発生しません。骨成長に対して相対的に筋・腱は引き伸ばされ,筋力も高まる中学生以降では多く発生します。ハムストリング(大腿二頭筋,半腱様筋,半膜様筋)の肉ばなれは陸上競技やサッカーに多く,腓腹筋のそれはテニスのサーブ時に多く,テニス脚とよばれます。筋挫傷はサッカー,バスケットボール,野球などで選手同士の交錯の際,外力で筋線維が断裂した状態で,大腿四頭筋の筋挫傷が多いです。本症に対しては後述のRICE療法で応急処置を行います。予防には運動・スポーツ前後の十分なストレッチを含めたウォームァップやクールダウンが必要です。

②捻挫・脱臼

捻挫とは関節に許容限界以上の外力が掛かり,関節包や靱帯などが損傷して一時的に関節面が逸脱するも,その後正常な位置関係に戻った状態であるのに対して,脱臼は関節面相互の持続的な逸脱状態です。捻挫は足関節や指関節,膝関節などに多く,バスケットボール,バレーボール,サッカー,バドミントンなどのひねり動作やジャンプ着地動作時に発生しやすいです。局所には腫脹や内出血を伴い,疼痛のため可動域が制限されます。膝関節では関節血腫を生じ,靱帯損傷や半月板損傷を合併することも多いです。脱臼はバレーボールやバスケットボールで肩の外転外旋動作を強制された場合に多いです。初期治療としてはRICE療法を行いますが,小児期の捻挫には骨折を伴う場合もあり,早期に整形外科を受診させるべきです。

③骨折

骨の長軸方向の成長は骨量の増加より先行するため,成長期のピーク時には骨量が十分でないために骨密度が一時的に減少する中学生時には骨折に注意が必要です。また,成長期の骨は多孔質で弾力性に富む一方で,未成熟で短く細いために成人の骨よりも強度は低く,ストレスに対して脆いです。したがって,特定のスポーツ動作が繰り返され,骨の同一部位に外力が慢性的に加わると,微小骨折が進んで疲労骨折を生じやすいです。

④RICE療法

RICE療法とは肉ばなれ,筋挫傷,打撲や捻挫時に局所の内出血や炎症の波及と悪化を抑えるための重要な応急処置です。RICEはrest(安静),icing(冷却),compression(圧迫),elevation(挙上)の頭文字を並べたもので,安静は外傷の悪化を防ぎ,冷却は炎症を抑制し,圧迫・挙上は腫脹を低減させます。

⑤骨折時の対処法

骨折の疑いがあれば,まず意識・呼吸・循環状態などの全身状態を確認します。骨折を疑う部位では腫脹,疼痛,圧痛や運動障害(神経や腱損傷),しびれ(神経障害),冷感(循環障害)などを確認し,冷却しながらシーネ(副子)で固定し,直ちに整形外科を受診してください。出血時には流水で泥やよごれを流した後,ガーゼで圧迫止血してシーネ固定後,直ちに専門医療機関を受診させます。なお,外固定の固定範囲は傷害箇所の隣接の2関節を含め,シーネで固定し,固定角度は良肢位とします。下肢であれば固定後,松葉杖などで免荷させて医療機関へ受診させます。固定後は神経麻痺・循環障害・褥瘡に留意します。

⑥良肢位

良肢位とは,「そのまま固まってもADL上有用とされる肢位」のことで,手指ではボールを軽く握る格好,手関節では20°背屈位,前腕回内外中間位で肘90°屈曲位,膝関節では軽度屈曲位,足関節では底背屈0°が良肢位です。

b)スポーツ外傷

各論

①頚部外傷

頚部外傷は常に脊髄損傷を伴っている可能性を前提に対処すべきです。頚部を中間位に固定し,気道を確保し,呼吸・循環状態を確認し,意識障害,しびれや麻痺などを評価しますが,一刻も早く専門医療機関へ搬送します。頚部神経過伸展症候群(バーナー症候群)は頚部部の過伸展によってC5,6神経根や腕神経叢が牽引されて発生し,上肢神経支配領域に焼けるようなしびれや肩周囲筋群の脱力などが生じます。症状の多くは数分で消失するものの,専門医療機関を早期に受診させる必要があります。予防には頚部の過伸展防止用の肩パッドやカラーなどを装着させます。

②肩関節脱臼

肩関節はバレーボールやバスケットボールで外転外旋位を強制される場合に脱臼することが多いです。三角巾固定など応急処置をして,すぐに専門医療機関を受診させ,整復後,外旋位で固定します。通常,2~3週間の固定が必要です。

③上腕骨近位骨端線離開

反復する投球動作によって上腕骨近位骨端線で生じる一種の疲労骨折であり,リトルリーガーズショルダーともいいます。投球動作時に肩痛があり,上腕骨近位骨端線部に圧痛を生じます。離開が軽度の場合は1~2か月間,投球中止します。

④肘関節周囲骨折

小学低学年の児童が鉄棒や雲梯からの転落によって肘関節を伸展位で手をつくことによって骨脆弱部である肘関節周囲の骨折を生じます。肘関節周囲の疼痛や変形が生じて多くは手術適応となります。腫脹や変形による血流障害が生じ,筋区画内圧が急激に上昇すると,骨折部以遠で筋・神経の変性壊死が生じるコンパートメント症候群(Volkmann拘縮)をきたし,早期発見・治療しなければ不可逆的変化を生じます。

⑤突き指

いわゆる“突き指”はスポーツ外傷のうちで最も多く,バレーボールやバスケットボールで指先にボールが当たって指の過伸展や過屈曲を強制されて生じます。打撲や捻挫だけでなく,腱断裂や剥離骨折,脱臼を生じていることもあり,正確な診断と的確な治療を受けないと変形や可動域制限,運動時疼痛が残ることがあります。したがって,安易な放置は勧められず,整形外科へ早期に受診すべきです。

⑥骨盤裂離骨折

疾走中やサッカーのキック動作時に骨盤の前・後面の筋の付着部に生じ,13~17歳の男子に多いです。突然激痛を生じ,転倒し起立困難となることがあります。1~2週間の安静後,松葉杖歩行を許可して骨癒合を待つが,スポーツ復帰には2~3か月が必要で,復帰には周囲筋群のストレッチを十分に行う必要があります。

⑦膝関節靱帯損傷

バスケットボールやバレーボール時の着地動作やラグビー,スキーなどの衝突,体力測定の反復横跳びでも時に生じることがあります。直後は膝痛,腫脹,関節血腫を認めます。骨端線閉鎖前の小学高学年では前十字靱帯付着部位の顆間隆起裂離骨折となることもあり,捻挫と軽々に見なしてはならないです。

⑧半月板損傷

膝関節の運動時痛や引っかかり感が出現し,断裂部が嵌頓(ロッキング)すると関節が動かなくなります。靱帯損傷と合併することも多く,正確な診断と的確な治療が必要です。

⑨足関節靱帯損傷

足関節の内返しが強制される足関節捻挫では多くは外側靱帯が損傷されます。小児では靱帯付着部位で裂離骨折を生じることも多いです。足関節痛,腫脹と圧痛があります。軟骨損傷を合併したり,的確な治療をしないと反復性となって足関節に不安定性が残存したり変形性関節症となることがあります。

C)スポーツ障害

①Osgood-Schlatter病

発育期の脆弱な脛骨粗面に繰り返し牽引力が加わった結果,骨化核が肥大あるいは癒合不全となった状態です。スポーツと関連し,男子に多く,好発年齢は男子で10~15歳,女子で8~13歳で,膝痛(走る,ジャンプ,階段昇降)があり,サッカー,野球,体操,バレーボール活動に多いです。脛骨粗面に圧痛があり,大腿四頭筋収縮で疼痛が誘発されます。しかし,小児期において誘因が明らかでない膝痛は時に骨肉腫のこともあるために,専門医療機関への早期の紹介が勧められます。

②離断性骨軟骨炎

関節軟骨が骨より離断する原因不明の疾患で,スポーツ活動性の高い成長期に多いです。大腿骨内側穎に多く、円板状半月を伴う例は大腿骨外側頼に多いです。膝関節痛や腫脹,運動時痛,引っかかり感などを訴えます。離断した骨軟骨片が関節内に嵌頓(ロッキング)を生じます。早期では保存療法も有効なため早期の受診が勧められます。

③円板状半月

膝関節の外側半月板に多く,膝屈伸時や伸展制限,弾発現象を呈し,外側関節裂隙に圧痛を認め,膝痛や可動域制限があれば手術が行われます。

④有痛性分裂膝蓋骨

膝蓋骨外側上部での分裂が多く,膝関節伸展時の疼痛,分裂部位での叩打痛を認めます。

⑤脛骨疲労骨折

弱い外力が繰り返し加わることによって生じた骨折で,発症年齢は16歳がピークです。脛骨上中1/3(疾走型),下中1/3(跳躍型)に運動時痛が出現します。同部に叩打痛を認 めます。時に下腿骨の骨腫瘍のこともあり,専門医療機関へ紹介します。

⑥シンスプリント

下腿中下1/3の内側に疾痛がランニング,ジョギングなどで生じる.脛骨後内側面に圧痛を認めます。疲労骨折や骨腫瘍との鑑別が必要です。

⑦外脛骨障害

外脛骨は舟状骨の後内側に位置する過剰骨で,足部の中央内側に骨性隆起部に疼痛と圧痛を認めます。足はアーチが低下した扁平足を呈します。

⑧Sever病

アキレス腱や足底筋によって踵骨の骨端核が牽引されることによって生じる骨端症です。学童期に多く,踵骨の圧痛や叩打痛を認めます。予防法の一つとして、踵部への衝撃軽減のためにヒールカップの使用が推奨されています。

⑨アキレス腱周囲炎・アキレス腱症

オーバーユースによってアキレス腱周囲炎はアキレス腱周囲に炎症が生じる病態で,アキレス腱症は腱実質の障害で腱の変性や微小断裂を呈する病態です。歩行時やランニング時の疼痛があり,アキレス腱周囲に腫脹や熱感があることがあります。

⑩上腕骨近位骨端線離開

overhead動作の多いスポーツで、特に野球にみられる障害でリトルリーグ肩(Little leaguer`s shoulder)とも呼ばれています。10~15歳に起こり、投球動作による上腕骨近位骨端線部に捻れと牽引力が繰り返し加わることで発生します。特に利き腕の肩の痛みや脱力感を訴える場合が多いです。X線像にて骨端線の離開がみられます。

2.タイトネス

小児期にはスポーツ傷害が生じる一方で,近年,身体が固く運動機能が十分に発揮できない,運動機能の低下した状態(運動機能不全)もみられることが明らかになっています。「運動器の10年」日本委員会の報告によると,“膝の後ろを伸ばし前屈して指先が床につかない”“足の裏を付けて完全にしゃがめない”および“両腕が耳に付くようにして完全に上がらない”子が,各々1~2割存在します。このような身体の固さ・タイトネスがあるとスポーツ障害の発生頻度が高くなる傾向があることが指摘されています。ストレッチによる柔軟性の向上は運動器疾患・障害の予防の鍵であると考えます。

スポーツ障害の予防と治療

これら障害の要因については、まずは筋肉の柔軟性の増大が求められます。その為には、スポーツ活動前後に行われるウォーミングアップやクーリングダウンでのスタティックストレッチングやダイナミックストレッチングを十分に行うことが重要です。また、スポーツ活動以外の時間においても、気になる箇所についてストレッチングを小まめに行うことが大切です。オスグッド病では、特に大腿四頭筋やハムストリングスの柔軟性を、シーバー病では下腿三頭筋の柔軟性の増大がポイントとなります。その他、アスレティックトレーナーなどのトレーナーによる柔軟性チェック(タイトネステストなど)を定期的に行うことや、膝や足部などのアライメントチェックなどの評価を行うことが望ましいです。トレーニング要因では、過度な練習量の増加に注意することや、適切なトレーニングの強度や量を考慮しなければなりません。環境要因としては、足部の形に合った様式のものやクッション性などを考慮するなどの適切なシューズの選択や用具の使用などが挙げられます。指導や管理といった部分では、早期発見のために選手自身に圧痛点などのセルフチェックを小まめに行わせ、痛みや違和感を覚えたらすぐに指導者や親に伝えるなどの指導を徹底することも大切です。また、指導者や保護者にジュニア期の身体的特徴と発生しやすい障害に関する理解を求め、選手に関わる全ての関係者に障害予防の意識をもっていただくことが重要です。

参考文献

内尾祐司 診断と治療 Vol.106-no.12 2018(92)
佐野村学 帝京大学スポーツ医療研究 第 12 巻:21-26

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