下肢のしびれ

しびれは通常,感覚障害に伴う自覚症状として,たとえば手がしびれる,足先がしびれる,などとして訴えられます。より具体的には,「歩くと,砂利の上を歩いている感じ」 「皮が一枚はってあるような感じ」など,様々に表現されます。感覚障害の訴えとしてのしびれは,末梢から中枢に至る知覚経路のいずれかに障害があるときに生じます。ここでは代表的な疾患に関して記載したいと思います。

下肢しびれ

腰椎病変

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアとは,椎間板の退行変性により生じた後方脱出が神経圧迫症状を引き起こす腰椎変性疾患です。

病態:

ヘルニアの発症は神経根,馬尾,あるいは脊椎洞神経に対するヘルニアの機械的圧迫と,脱出ヘルニアの周囲で生じる非特異性炎症が加わり引き起こされます。ヘルニアの主要症状は腰痛,および下肢の放散痛としびれです。近年、MRIによる追跡が可能となり、ヘルニアのタイプによっては症状の改善とともに脱出ヘルニアが自然縮小することが確認されてきました。

発生頻度:

腰椎椎間板ヘルニアは脊椎外科領域において最も扱う疾患でありますが,無症候性の存在も多く,その発生率,ならびに有病率の詳細は十分明らかにされていません。20 ~ 40 歳代に好発し、男女比は 2 ~ 3:1 で、人口の約1%が罹患し,手術患者は人口10万人あたり46.3人との報告もあります。

臨床症状:

腰痛と下肢痛は必発しますが,通常,腰痛が先行し,引き続き下肢痛が発生します。歩行障害や膀胱直腸障害を発生することもあります。
下肢痛は放散痛にしびれを伴います。ヘルニア高位別の下肢痛領域には差異があり,上位3椎問は大腿神経領域,下位2椎問は坐骨神経領域の愁訴が多いです。L1/L2では鼠径部・大腿前面,L2/L3では大腿前面,L3/L4では大腿前外側・膝・下腿内側,L4/L5とし5/Sでは大腿後面・下腿後外側・足背の愁訴で,多くは神経根の走行に一致しています。
神経刺激症状は下肢伸展挙上テスト(straight leg raising test;SLRT),大腿神経伸展テスト(femoral nerve stretch test;FNST)などの陽性徴候となります。

SLRテスト

画像診断:

単純X線像はヘルニア診断に限定すれば有用性は低いです。MRIは診断能の向上が著しく,ヘルニア診断のスクリーニングとして第一選択されます。単椎間ヘルニアの確定診断と治療方針の決定はMRI単独でほぼ可能です。

L5/S椎間板ヘルニアのMRI画像

 

治療方針:

ヘルニアは愁訴が疼痛中心の変性疾患で,多くが手術療法を受けることなく改善するので,保存療法が原則となります。腰痛と下肢痛が激痛でも保存療法を第一選択しますが,保存療法の無効のもの,保存療法で疼痛の増強や神経麻痺の進行するものは手術適応となります。手術療法の絶対的適応は高度の運動麻痺,膀胱直腸障害などに限られ,その他は相対的適応といえます。とくに急性発症した馬尾症候群の膀胱直腸障害には緊急手術が必要です。
保存療法は安静と薬物療法が基本となります。
薬物療法は非ステロイド性消炎鎮痛剤が最も頻用されるが,効果が乏しい場合にはブロック注射を行います。ブロック注射は通常,硬膜外ブロックあるいは神経根ブロックが行われ,局所麻酔剤による鎮痛効果と副腎皮質ステロイド剤による抗炎症効果が期待できます。硬膜外ブロックは外来患者にも比較的安全に行えるので第一選択されますが,硬膜外ブロックが無効時の神経根性疼痛には神経根ブロックを選択します。

参考文献
藤村祥一 総合臨床2006.9/Vol.55/No.9

腰部脊柱管狭窄症・腰椎変性すべり症

1)病態・症状

腰部脊柱管狭窄症は好発年齢が60歳以降と腰椎椎間板ヘルニアに比べて高齢です。これは加齢とともに変性が起こることや、黄色靭帯の肥厚によって生じる脊柱管狭窄のためです。
また、加齢によって脊椎がずれる病態を腰椎変性すべり症とよびます(図1)。このずれによって脊柱管狭窄症が生じます。腰椎変性すべり症も年齢とともに頻度は高くなり、女性に多いといわれています。

2)症状・診断

診断は、特徴的な腰痛や下肢の痛み・しびれによって、とくに神経根型、馬尾型、混合型の 3 つのタイプに分けられます。神経根型は片側下肢の痛みとしびれが特徴的です。馬尾型は両下肢のしびれや下肢筋力低下、場合によって膀胱直腸障害をきたします。混合型は神経根型と馬尾型が同時に出現します。いずれも歩行や立位持続による腰椎への負荷によって症状悪化をきたし、場合によっては行動制限(神経性跛行)が出現します。腰部脊柱管狭窄症の症状では、前かがみで立ち止まるときや自転車に乗るなど、腰椎前屈動作によって症状が軽快するのが特徴的です。閉塞性動脈硬化による血管性跛行との鑑別も必要です。
画像診断は MRI が有用で、腰椎での脊柱管狭窄所見がポイントです。1つの椎間だけでなく、複数のレベルで狭窄が生じている場合があります。

3)治療

軽症例では消炎鎮痛薬やプロスタグランジン製剤、神経障害性疼痛治療薬(ガバペンチン・プレガバリン・ミロガバリン)が処方されることが多いです。
跛行が悪化した場合、また下肢筋力低下や膀胱直腸障害をきたす場合は手術適応となり、腰部脊柱管狭窄症では後方開窓術、不安定性がある腰部脊柱管狭窄症と腰椎変性すべり症では、後方除圧固定術が行われることが一般的です。

腰椎分離症・腰椎分離すべり症

1)病態

少年期に疲労骨折を生じた際に、強い腰痛が起こることが知られています。この疲労骨折の骨癒合が完成されず、偽関節状態になったものが腰椎分離症と考えられています。とくに剣道や投球動作を行う野球、テニスなどで発症しやすいといわれています。L5 に生じることが最多で、時にL4 に生じます。
腰椎分離症から腰椎分離すべり症に発展する頻度は、およそ10%程度と考えられています(図2)。いったんすべりを生じると椎間板の変性もともなうため、無症候性のものは減少します。腰椎への負荷によって発症しやすく、腰痛や神経症状の程度も強くなります。

図2

2)症状

腰痛と、神経根症による片側もしくは両側の下肢痛が生じます。腰椎分離すべり症は腰椎変性すべり症とは異なり、脊柱管狭窄が起こることはまれで、馬尾神経障害をきたすことはほとんどありません。

3)診断

診断は前述した所見とX線画像、CT画像によって可能です。

4)治療

腰痛が生じて間もなくであれば、スポーツの中止とコルセットもしくは腰部のサポーターなどの適宜使用で症状が緩和することが多いです。ADLを著しく制限する痛みには鎮痛薬の内服や外用、温熱治療、腰痛体操などで経過をみることが一般的です。
通常、腰椎分離症では保存治療が効果的であり、手術を行うケースは非常に少ないといえます。腰椎分離すべり症まで至ると、神経根症が発症することで下肢痛やしびれによって跛行を呈するようになり、鎮痛薬やプロスタグランジン製剤などの薬物療法が主体となります。内服薬でも効果が乏しい場合、硬膜外ブロックや神経根ブロックによる疼痛緩和を試み、抵抗性の場合は手術治療となります。手術は一般的には後方椎体間固定術が行われます。

参考文献

平井高志 整形外科看護 2019 vol.24 no.8 (759)

末梢神経障害

梨状筋症候群

1)病態・症状

梨状筋症候群は、坐骨神経が骨盤から下肢へ通過する際に股関節周囲の筋肉である梨状筋による圧迫や牽引などによる機械的な影響を受けて生じる神経障害と考えられています。坐骨神経領域の痛みやしびれが主症状ですが、より頻度の高い腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症と比べると非常にまれな疾患です。
梨状筋と接する部位の坐骨神経の走行には多くのパターン(破格、図1)があり、これが疾患の発症と関連があるともいわれています。

2)診断

股関節外旋位での痛み誘発テスト(フライバーグFreibergテスト、図2)が陽性であること、梨状筋への局所麻酔薬の注射によって症状の改善をみることでわかります。ただし、先に述べたように腰椎疾患との鑑別が必要であるため、腰椎MRIなどによって、腰椎疾患を否定する必要があります。

図1

図2

3)治療

ガバペンチンなどの神経障害性疼痛治療薬の服用や、股関節周囲筋のストレッチ指導が行われます。症状が強い場合はブロック注射が行われます。MRI上で明らかな神経圧迫像があり、症状が長期に持続する場合は梨状筋切離術を行うことがあります。

足根管症候群

1)病態・症状

足根管は足部の内側にあり、足関節内果と距骨、踵骨、屈筋支帯でつくられる後脛骨神経が通過するトンネル(図 3)であり、足根管で起こる絞扼性神経障害を足根管症候群といいます。変形性足関節症による骨棘突出、ガングリオンなどの占拠性腫瘍、屈筋腱腱鞘炎、筋肥大、静脈瘤などによって神経を圧迫する病態です。

2)症状

足底や足趾の痛みやしびれ、同部位の知覚低下が特徴です。動作時、とくに歩行で痛みが増悪することがあります。さらに足根管を狭窄させるような足関節外反を行うと症状が悪化し、足の裏に放散痛が出現することがあります。進行すると筋力低下や萎縮が出現する場合があります。

図3

3)診断

足根管直上の皮膚を叩打すると足底にしびれが走るティネルTinel 徴候が陽性であること、また単純X線やCT画像で足根管底部を構成する骨・関節の異常がみられることから診断できます。電気生理学的検査でも伝導遅延がみられることがあります。

4)治療

保存治療として安静や消炎鎮痛薬の外用・内服が主体です。症状が強くなればステロイド薬と局所麻酔薬の足根管内への注射を行う場合があります。ガングリオンや骨性圧迫要素がある場合は、観血的に腫瘤摘出や骨棘切除、神経剥離術が行われます。

Morton病

1)病態・症状

Morton モートン病は、足にある足底神経が趾神経に足にある足底神経が、趾神経に分岐する直前で深横中足靭帯によって圧迫を受けて発生する絞扼性神経障害です(図 4)。とくにストレスのかかりやすい第 3・4 趾間でもっとも頻度が高いです。症状は中足骨骨頭を中心とした前足部の痛みと、趾間部のしびれや知覚低下です。

図4

2)診断

局所に生じる足趾と足趾間の痛み、それにともなって生じる知覚障害で診断します。MRI は腫瘤性病変の有無を検索するのに有用です。また機能診断として、局所麻酔薬を患部である神経分岐部に注射し、症状が改善するかを判別するのも有効です。

3)治療

足部の安静を指導します。アーチサポートの着用によって MTP 関節の背屈を制限し、横アーチ減弱と前足部内反の矯正を目的とした中足骨パッドの着用を促します。また、局所麻酔薬やステロイド薬による神経ブロックを行い、症状を緩和します。
保存治療が無効な場合は、腫瘤性病変の摘出や骨棘切除などの手術が適応になります。

参考文献

平井高志 整形外科看護 2019 vol.24 no.8 (763)

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