手の軟部腫瘍

はじめに

手は軟部組織が比較的少ないので,腫瘍や腫瘤に気が付きやすい場所です。しかし,疼痛などの自覚症状がない場合,放置されている場合もあります。手の軟部腫瘍として,ガングリオンがもっとも多く,その他に粘液嚢腫,表皮嚢腫,腱鞘巨細胞腫,腱線維腫,腱黄色腫,血管腫,グロムス腫瘍,神経鞘腫,神経線維腫などが挙げられます。軟部腫瘍の画像診断はMRIによりますが,T1・T2強調像とも高信号の脂肪系腫瘍以外はTl強調像で低信号,T2強調像で高信号のことが多く,特徴的所見に乏しくMRIで良悪性の診断など質的診断はできないことが多いです。良性腫瘍として典型的な臨床症状や発生部位でないときは軟部肉腫を疑って鑑別診断する必要があり,腫瘍専門医に相談します。

ガングリオン

ガングリオンは手のさまざまな部位に発生します。手の腫瘍のなかではもっとも多い腫瘍です。原因は不明で,さまざまな説があります。基本的には関節を包む袋(関節包)や腱が通る硬いトンネル(腱鞘)から発生するため、関節や腱鞘内との交通があります(図1)。ガングリオンを穿刺すると粘液を排出し,小さくなります。 発生しやすい部位は手の甲(手背)、手首(手関節)の掌側、手のひら(手掌)、第1関節(DIP関節)および第2関節(PIP関節)です。腫瘤として触れる場合と触れない場合とがあります。神経を圧迫することで痛みを生じることがあります。専門医が視診・触診するとわかることが多いです。穿刺するとゼリー状の液が排出され,ガングリオンと診断します。小さいもの,動脈や神経が近い部位は穿刺せず,エコーやMRIで診断します。 また,腫瘤が触れない場合でも、神経症状の原因としてガングリオンが神経を圧迫していることもあり,エコーやMRIではじめてガングリオンの存在がわかることもあります。症状がない場合は放置しても問題ありません。症状として疼痛やガングリオンによる神経圧迫などがあれば,手術を考慮します。手術しても再発することがあります。

粘液嚢腫

中高年の主にDIP関節背側に発生する嚢腫です。ガングリオンと類似します。変形性関節症の随伴症なのでX線で関節に骨棘を認めます。手術治療として,嚢腫を残しても関節の骨棘を切除して関節形成をすることのみで粘液嚢腫が治癒していくと報告されています。

腱鞘巨細胞腫

腱鞘巨細胞腫は色素性絨毛結節性滑膜炎pigmented villonodular synovitis(PVNS)と同一起源として2013年のWHO分類では腱鞘巨細胞腫をtenosynovial giant cell tumor, localized type,PVNSをdiffuse typeと分類しています。膝など下肢の大関節に多く関節滑膜からびまん性に発生する色素性絨毛結節性滑膜炎に対して,腱鞘巨細胞腫は腱鞘滑膜から発生して手指の小関節付近で伸筋腱DIP背側や屈筋腱腱鞘から腱鞘内外,関節包に結節性に発育して骨浸蝕性や骨圧排性に発育することもあり,単純X線で骨の圧痕がないかを確認します。手術治療として,多結節性発育や骨浸潤を見逃さず,徹底的に切除しないと再発しやすいです。

血管腫

手を挙上・下垂したり,圧迫・駆血で色や大きさ,硬度が変化することがあります。表在性のものでは,色調で範囲を推定したり,圧迫で体積が変化するか,聴診で血管雑音がないか血流状態を確認します。超音波のカラードプラ法やパルスドプラ法も有用です。X線で静脈石をみることがあります。手術治療として,切除可能か術前画像診断の評価が大切です。びまん性のものでは完全摘出は困難で,塞栓術の適応か検討します。また外傷性動脈瘤や血栓と鑑別が必要です。

グロムス腫瘍

神経血管糸球由来の腫瘍であり,爪下・指尖部に発生することが多いです。通常mm単位の大きさのため画像でとらえにくいです。ただし長く診断されなかった例では末節骨の圧痕を認めることもあります。ピンポイントの圧痛や温度変化による疼痛の悪化,患肢の駆血で疼痛が減弱,腫瘍の着色や爪の変化などの症状が特徴的です。顕微鏡を用いて腫瘍を切除します。

手の悪性腫瘍・軟部肉腫

爪下などには悪性黒色腫などの皮膚癌も好発しますので,色素沈着があれば皮膚科と連携をとることが重要です。潰瘍形成があるときは類上皮肉腫や扁平上皮癌などの悪性の化膿性があるので,感染と決めつけないで病理組織で確認することが重要です。滑膜肉腫(悪性)は15~40歳の若年の関節の近傍に比較的緩徐に発育するので,腫瘍が小さくても要注意です。明細胞肉腫(悪性)も20~40歳の女性に多く,発育が遅いので経過が長いから良性ということにならないです。手の軟部腫瘍をみて良性軟部腫瘍の典型例から外れる場合は悪性である軟部肉腫を考慮しなければならないです。診断が難渋する場合は,生検もしないで腫瘍専門医に相談します。

参考文献

石崎力久 整形外科看護 2020 vol.25 no.7

小林宏人 MB Orthop.29.(11):50-57,2016

関連記事

  1. 靴に関して

  2. 膝関節靭帯損傷

  3. こどものスポーツ傷害~大人との違い~

  4. 扁平足

  5. 腰痛に関して

  6. 足部・足関節のトラブル

PAGE TOP