院長ノートNOTE
院長ノート

腰痛に関して

腰痛に関して

腰痛に関して

腰痛は国民の代表的な痛みであります。「国民生活基礎調査の概況」では、腰痛は男性で第1位、女性は肩こりに次いで第2位の症状となっており、国民病といえます。腰痛は高齢者においては寝たきり・要介護の原因であり、若年者においては不労の原因となりえ、年齢を問わず健康寿命に重大な影響を及ぼし、社会的課題であるといえます。

腰痛の原因

腰痛は「腰が痛い」という症状であって、特定の疾患名(病気の名前)ではありません。脊椎(せぼね)由来,神経由来,内臓由来,血管由来,心因性などに分類されます。具体的には、脊椎(せぼね)の病気には、変形性腰椎症、椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症などのほかに、骨粗鬆症や転移性腫瘍に伴う圧迫骨折や背骨の腫瘍、炎症、感染症などがあります。内臓の病気には腎盂腎炎炎や尿路結石、子宮筋腫や子宮内膜症、胆嚢炎や消化器癌などがあります。大動脈解離や大動脈瘤などの血管性のケースもあります。またうつ病、不安神経症など精神的な原因や家庭内・職場問題など心理的ストレスが腰痛の背景に潜んでいることもあります。

ほとんどの腰痛は原因が特定できない非特異的腰痛と言われていますが、危険信号(red flags)を有する腰痛は上記に示したようにがんの転移や感染、骨折、内臓の病気など、重大な状態が隠れていることがありますので、要注意です。
 

腰痛診療ガイドライン2019より作成

治療

急性腰痛の多くは1カ月程度で改善します。しかし約6割は1年後も腰痛が残り、さらにそのうちの約6割の人は腰痛を再発するといわれております。下記の治療を組み合わせて、総合的に治療を行うことで症状の改善・予防が期待できます。

薬物治療

腰痛に対して使用可能な薬剤は多彩であり,治療の幅は広がってきました。非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)、アセトアミノフェン、神経障害性疼痛治療薬、弱オピオイド、筋弛緩薬、抗うつ薬などがあります。年齢や症状および合併症を考慮して,薬剤を使い分ける必要があります。効果を定期的に評価し,漫然と投与しないように投薬内容を調整します。

注射療法

従来行われてきた注射療法にはトリガーポイント注射,硬膜外ブロック,神経根ブロック,椎間関節ブロックおよび椎間板内注射があります。

最近,fascia release,fascia hydroreleaseと呼ばれる注射療法が施行されており、効果を示しています。その治療目的は超音波検査を活用して,局所麻酔薬を使用せずに,生理食塩水を病巣に注入して液性剥離を行います。超音波検査で病巣部の評価を行いながら,同時に穿刺部位への薬液注入をリアルタイムで画像で確認できるため,安全性・正確性が高いです。

運動療法

ガイドラインにて強く推奨されており,運動の頻度に関しては週に1~3回行い、筋力upを期待するなら最低10~12週以上を行うことが推奨されています。

生活習慣の指導

前述の運動療法とも関連しますが,運動不足は腰痛発症につながります。また,喫煙も腰痛の危険因子です。一方,肥満度が腰痛の発症に相関するというエビデンスは現在のところないです。テレワーク普及により腰痛を発症したケースも散見され、座位姿勢も注意が必要です。

参考文献


三枝 徳栄,筑田 博隆 Pharma Medica vol.38 No.1 2020
小林 洋 紺野愼一 Nippon Rinsho Vol.77、No.12,2019-12