新型コロナウイルス感染症

はじめに

2019年12月に発生した新型コロナウイルスは,武漢市を中心に大規模な流行が生じました。その後,世界中に広がり,わが国においても新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease, COVID-19)の罹患者や死亡者が増加しました。未知のウイルスであり,治療薬やワクチンもないため,街を封鎖するロックダウンやわが国では緊急事態宣言を発令し,流行の拡大を抑制するという今までにない対策が講じられました。また,わが国の生活様式も一変しました。

病原体

本疾患の存在が中国から明らかにされた約1週間後には中国の研究者により原因として,新しいコロナウイルス科のウイルスが分離され,さらに数日後の2020年1月12日にはその全ゲノム配列が明らかにされました。コロナウイルス科のウイルスは1960年台に分離され,これまで主に風邪の主要な原因ウイルスとして知られてきました。ところが,近年この科のウイルスには,重篤な流行性呼吸器疾患のアウトブレイクを起こすものがあることが明らかとなりました。2002年11月に中国広東省から始まり,2003年7月5日に終息宣言が出された重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome:SARS)の原因ウイルスSARS-CoV(SARS coronavirus)と,2012年9月に確認され,主に中東で流行し,致死率34.4%)している中東呼吸器症候群(middle east respiratory syndrome:MERS)の原因ウイルスであるMERS-CoV(MERS coronavirus)であります。今回COVID-19の原因ウイルスとして同定されたコロナウイルスはこれら2つのウイルスと同様のβ一コロナウイルスに属するウイルスです。

コロナウイルス感染症の比較

感染予防策

本ウイルスの主要な感染経路は飛沫感染と考えられます。これに対してはまずはサージカルマスク装着がもっとも重要な感染予防策です。近年、SARS-CoV-2伝搬予防にサージカルマスク装着はきわめて有効であることが明らかとなりました。サージカルマスク着用が推奨されます。

検査

感染症診断の基本は病原体診断となります。この意味から本感染症においても,ウイルス培養またはPCRなどの核酸増幅によるウイルス遺伝子の証明が診断の基本となります。ウイルス核酸の検出に変えてウイルスのタンパク質を検出する抗原検査も利用できます。PCRに比べた感度は劣るものの,検体処理能力が高いのが特徴となります。検体の種類は検査を行う上できわめて重要であり,気道検体が適切であると考えられ,喀痰,鼻咽頭ぬぐい液が最も良い検体とされています。

検体箇所

症状・合併症

COVID-19は発熱咳などの一般的な症状の他に,いくつかの特徴的症状を呈することが知られています。突然の嗅覚・ 味覚障害は本症の特徴的臨床所見と考えられます。他に,本感染症の重要な合併症として,血栓・塞栓症があげられます。肺炎重症化にはサイトカインストームが密接に関連していると考えられています。

治療:ワクチン

本症に対して,現在までに多くの治療薬候補があげられ,臨床試験が行われています。これらの中で,現在までに臨床試験で一定の有用性が証明されたのは レムデシビルとデキサメサゾンです。本邦で開発されたRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤ファビピラビル(アビガン®)は無症状・軽症患者を対象に臨床試験が行われましたが,その途中経過では有効性の証明には至らなかったです。しかし今後の大規模試験での検証によって有効性が示される可能性があります。

治療薬とともに,本感染症克服のために必須なのがワクチンです。現在,多くのワクチンが開発中ですが,その作用機序は,①弱毒化生ワクチン,②不活化ワ クチン,③核酸ワクチンに分けられます。いずれのワクチンも最終的にはウイルス構成蛋白を抗原提示細胞に取り込ませ,CD8リンパ球やCD4リンパ球への抗原提示により,細胞性・液性免疫を惹起します。新型コロナウイルスに対し使用されているワクチンは核酸ワクチンとなり,大きく分けると2種類になります。メッセンジャーRNAワクチンとウイルスベクターワクチンです。
メッセンジャーRNAワクチンはウイルスが作られるときの鋳型になるメッセンジャーRNAの一部(ウイルス表面のスパイク部分)を取り出し、化学的に合成したものです。体内に入るとウイルス蛋白の一部だけが作られ、免疫応答が起こります。ウイルスベクターワクチンはウイルスのRNAの一部をアデノウイルスベクターに組み込んで化学的に合成したものです。ベクターは細胞内にウイルスRNAを運びウイルス蛋白を産生させ、免疫応答が生じます。ベクター自体は増殖機能を欠失させているため複製されません。
これらのワクチンはいずれも全ウイルスの形では体内に入らないためウイルス感染の原因になることはありません。急ピッチで開発されたワクチンであるので,本当に有効か(感染防御に有効なのか,重症化回避に有効なのか),ワクチンの有効性はいつまで持続するのか(一度投与すれば数年間有効か,ウイルス変異により毎年投与しなければならないのか),数百万人に投与したときに副反応はどうかなど,多くの解決すべき問いが残されています。

当然ながらワクチンで完全に新型コロナウイルスの感染を防ぐことはできません。しかし,ワクチンによる予防率が100%でなかったとしてもワクチン接種を行った人が増えることによってウイルスの広がりが抑制され感染爆発が避けられることが期待できます。これを集団免疫といいます。集団免疫は大体70%近くの方に抗体があれば成立すると考えられています。

私自身は2021年2月19日にファイザー製薬製のワクチンを接種しました。注射施行時の痛みは全くなかったです(正直驚きました)。その後3日ほど注射部位の腫れと痛みがありましたが,その他の副反応はございません。皆様の不安や心配に少しでもお役立てできるように情報発信できればと考えております。お気軽にお尋ねください。

2021.2.19 産経WESTより

リウマチトピックス

米国リウマチ学会では新型コロナワクチン接種に伴う休薬推奨が草案として発表されております。(COVID-19 Vaccine Clinical Guidance Summary for Patients with Rheumatic and Musculoskeletal Diseases Developed by the ACR COVID-19 Vaccine Clinical Guidance Task Force on February 8, 2021.)

その内容は

  • MTXとJAK阻害薬⇒接種後1週間休薬
  • アバタセプト皮下注⇒接種前後1週間 計2週間休薬
  • ステロイド・TNF阻害薬・IL-6阻害薬は休薬不要

となっており,ワクチンによる抗体産生をより効率化するための休薬と考慮されます。日本リウマチ学会の声明はまだ出ておらず,今後アナウンスされると予想されます。

まとめ

新型コロナウイルスに関して多くの知見が積み上げられており,ワクチンに代表されるように急ピッチで本ウイルスへの有効な対抗策の研究・開発が進んでいます。われわれ医療従事者は引き続き叡智を結集し,本疾患克服にむけて力を注いでいくことは使命であります。

参考文献

千酌浩樹 鳥取医誌第48巻,第1・2号(4~11),2020

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