院長ノートNOTE
院長ノート

熱中症とは

熱中症とは

熱中症とは

熱中症とは、熱によって起こるさまざまなからだの不調のことをいいます。湿度や気温の高い環境にいると、体温を調節する機能が乱れることや、体内の水分や塩分のバランスが崩れることがあり、そのため体温上昇・めまい・頭痛・けいれん・意識障害などの症状を起こした状態を熱中症といいます。

熱中症は室内でも夜間でも起こる

熱中症は炎天下特有のものではなく、屋内・夜間でも起こる可能性があります。湿度が高い環境や急に暑くなった日などは屋内にいても注意が必要です。
人間には体温調節機能が備わっているため、体温が上がり過ぎたときには、自律神経の働きによって皮膚に多くの血液が流れ込むことで熱をからだの外に放出します。同時に、体温が上がったら汗をかき、その汗が蒸発するときにからだの表面から熱を奪うことで、上がった体温を下げようと働きます。しかし高齢者や乳幼児は、この体温調節機能の衰えや未熟さによって体内の熱を体外にうまく放出できず体内に熱がこもりやすく(体温が上がりやすい)、暑さを自覚しにくいこともあるため、身体を冷やせない環境下では、どんな時、どんな場所でも熱中症対策が必要です。

水分だけ補給していると状態を悪化させる ORSが最適

夏は室内外問わず、熱中症への注意が必要です。熱中症の症状がみられたら、まずは涼しい場所で安静にし、水分と塩分を補給しましょう。
熱中症が疑われる症状が出ている時に、水分だけを補給すると、かえって症状を悪化させることがあります。
高温多湿の環境で汗を大量にかくと、体内の水分とともに塩分やミネラルも奪われます。そこに水分だけを大量に補給すると、血液中の塩分・ミネラル濃度(体内における塩分やミネラルの割合)が低くなり、かえって様々な症状を引き起こします。水分だけでなく塩分やミネラルも一緒に補給することが重要です。
コップ1杯(200ml)の水に、ひとつまみ(0.2g)の塩を入れた塩水か、経口補水液(ORS:Oral Rehydration Solution)がよいとされています。
ORSとは水分と電解質を素早く補給できるように、ナトリウムとブドウ糖の濃度を点滴のように調整した飲料です。その成分は WHOにより定められていて、国内では OS-1®(大塚製薬工場)、アクアサポート®(明治)、アクアライト ORS®(和光堂)などの製品名で販売されていますが、実は家庭でかんたんに作れます。
水(湯冷まし)1リットルに砂糖40g(上白糖大さじ4と1/2杯)と食塩3g(小さじ1/2杯)を入れてよく溶かし、飲みやすい温度にしてから果汁(レモンやグレープフルーツなど)を加えてできあがりです。果汁を絞ると飲みやすくなり、カリウムの補給にもなります。

もうろうとした状態の場合、救急対応を

熱中症診療ガイドライン2015より引用

熱中症になっても意識があり、症状が軽い時には、すみやかな水分&ミネラル補給は正しい対応です。しかし、吐き気があったり意識がもうろうとしたりしている時は、水分摂取が誤嚥につながるおそれもあり、点滴治療が必要となりますので、医療機関を受診してください。
その場合は、まず涼しい場所に移動し、水で濡らしたタオルや保冷剤を、首筋・脇の下・脚の付け根(そけい部)など血流の多い箇所に当てて身体を冷やし、速やかに病院に搬送しましょう。

参考文献

日本救急医学会熱中症に関する委員会.熱中症診療ガイドライン2015.
Emer-Log 2022 vol.35 no.1