市中肺炎とは

肺炎は、発症場所によって市中発症型肺炎院内発症型肺炎に大別され、市中肺炎は病院外で日常生活していた人に発症した肺炎と定義されます。ここでは市中肺炎に関しての診断・治療を説明したいと思います。

診断のポイント

身体所見(聴診所見,発熱,頻脈,呼吸数の増加)および胸部単純X線写真の浸潤影で診断します。市中肺炎において,生命予後に重大な影響を与えるのは,患者の背景因子および起炎病原体です。細菌性肺炎と非定型肺炎との鑑別を行い,治療薬を選択します。

成人肺炎診療ガイドライン2017では,市中肺炎の原因菌を一般細菌と非定型病原体(マイコプラズマ,クラミジアなど)の二つに分けて,両群を鑑別するための基準を設けています(表1)。6項目中4項目を満たせば非定型肺炎群と判定されます。

表1 細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別項目

肺炎マイコプラズマ及びクラミジア属で検討されたもの
成人肺炎診療ガイドライン2017

 

治療方針

市中肺炎の起炎微生物では肺炎球菌の頻度が最も高く,マイコプラズマ,インフルエンザ菌が次に多いです。

治療薬の選択に際して,細菌性肺炎と非定型肺炎とを鑑別することは重要です。痰が少なく頑固な咳を認める際には,マイコプラズマおよびクラミジアによるものを考慮します。

特に若年層ではマイコプラズマ肺炎の頻度が高いです。

肺炎の治療の場を決定する際には,重症度を正しく評価する必要があります。重症度の指標として,①男性70歳以上,女性75歳以上,②BUN 21mg/dL以上または脱水あり,③SpO 2  90%以下(PaO 2 60Torr以下),④意識障害,⑤血圧(収縮期)90mmHg以下,を用い,該当するのが0項目であれば外来治療,1~2項目であれば外来または入院治療3項目以上あれば入院治療,4~5項目あれば重症肺炎としてICUへの入院治療とします。

軽症(~中等症)の場合は,外来治療(内服抗菌薬,または外来通院による注射抗菌薬投与)が推奨されます。細菌性肺炎(肺炎球菌やインフルエンザ菌等)と非定型肺炎(肺炎マイコプラズマ等)を鑑別した上で,前者にはβラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬,後者にはマクロライド系薬が第一選択薬となりますが,高齢者は両者の鑑別が難しく,ニューキノロン系薬も第一選択薬となります。ただし,キノロン耐性は比較的容易に誘導される危険性があり,また,キノロン系薬の投与は肺結核の診断の遅れを誘発する危険性もあり注意が必要です。

抗生剤適正使用の考え方

培養結果が確定する前に、原因微生物を推定して、それらに対して有効と思われる抗菌薬を最初に投与開始します。これを empiric therapy(経験的治療)と呼びます。しかし、これは患者にとって最も適切な抗菌薬ではありません。培養結果が確定して、感染症を起こしている真犯人が特定できれば、それに対して効果の期待できる、最小スペクトラムの抗菌薬に変更する必要があります。これを definitive therapy(最適治療)と呼びます。

この最適治療の抗菌薬は、経験的治療で選択する抗菌薬に比べて、概して狭域スペクトラムであることが多いですので、この経験的治療から最適治療に変更する治療戦略をde-escalation と呼びます。

De-escalation を行うメリットには、薬剤耐性菌の抑制、クロストリジオイデス・ディフィシル感染症やカンジダ感染症の抑制、抗菌薬に関連する医療費の削減などがあります。昨今、薬剤耐性(antimicrobial resistance;AMR)が世界中で問題になっています。

このままAMR に対して何の対策もしなければ、2050 年には世界で年間 1,000 万人がこの薬剤耐性菌が原因で死亡するといわれています。抗菌薬の適正使用は大きな課題の一つであり、de-escalation はその手段としてとても重要です。

参考文献

清水博之 Emer-Log 2019 vol.32 no.4
比嘉 太 Medical Practice vol.35 no.4 2018
今村圭文 日本医事新報 No.4959

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