「扶氏医戒之略」

整形外科医を選んだ理由

私が整形外科医を志す事になったのは、学生時代、整形外科教授でありました吉川秀樹先生の講義で、緒方洪庵先生のお話をお聞きしたのが、きっかけです。その講義では、吉川教授の専門である骨腫瘍のありがたい講義内容は、残念ながら忘却の彼方となりましたが、「扶氏医戒之略」のお話は、医師としての理想像だけでなく、一人の人間としての理想像として、その言葉に深く感銘を受けた事を今でも鮮明に覚えております。

物心ついた時から野球が好きで、元々運動器に興味がありましたが、教授のお言葉が決め手となり、吉川教授の元で、医師として研鑽を積みたいと思い、整形外科教室に入局致しました。

~扶氏医戒之略~

  • 簡易的に示します
     医師は私欲のためでなく、患者のために全力を尽くすべき。
     患者の社会的地位や身分、貧富に関係なく治療を行う。
     医療の目的は患者を治すことであり、患者を道具にしてはならない。診療においては視野を広げて、無闇にあれこれ試さず、謙虚になって、細心の注意を払うべきである。
     医療の研鑽を積むだけでなく、日ごろから言動に注意を払って患者の信頼を得なければならない。詭弁や珍奇な説を唱えて、売名行為は行ってはならない。
     診察した患者については症例研究することを日課にすべきだ。
     医師はたとえ学術に優れ、言動も厳格であったとしても、信頼されなければ、力を発揮することはできない。患者の守秘義務は当然のことであり、また、賭博や飲酒、放蕩、利益に欲深いのはもってのほかである。
     ほかの医師を批判してはならない。その根底には医師は患者を救うという共通の目標に向かって各自研鑽し、お互いに尊重すべきである。
     医師が相談して診断を下すときには、少数精鋭で行い、患者のことを優先的に、自説に固執して争論になってはいけない。
     患者が医師を変える際には、医師どうしの仁義がある。前の医師の顔を立て、診療の経過をたずねたうえで引き受けるべきだ。しかし、明らかな治療ミスや救急の場合は例外であり、すぐに対応すべきである。

大阪大学医学部は適塾の流れを受けており、緒方洪庵先生は学祖と言えます。180年前の心得でありますが、医療技術は比較にならないほど進歩した現代においても、医の倫理として十分に通用する重みのある言葉で、医師としてのあるべき姿が明確に述べられています。

煎じ詰めれば「病者のために最善を尽くす」ということであり、そのための不断の努力を積み重ね、今後も地域医療に邁進する所存です。

当院のモットーであり、医療従事者としての心構えでもあります。

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