手指の痛み
母指CM関節症
母指CM関節症はDIP関節症に次いで多く見られる変形性関節症で,多くが中年以降の女性に生じます。物をつまむ時やビンのふたを開ける時など母指(親指)に力を必要とする動作で、手首の母指の付け根付近に痛みが出ます。進行するとこの付近が膨らんできて母指が開きにくくなります。関節症性変化が進行すると母指の指先の関節が曲がり、手前の関節が反った変形(白鳥の首)を呈し、母指を開くことが出来ずに大きなものを把持できなくなります。
まず保存治療が試みられ,消炎鎮痛剤,関節内ステロイド注射,装具療法などが挙げられます。保存治療で改善しない場合は,手術治療が施行されます。
参考文献
小笹泰宏 北海道作業療法・35巻3号・2018年8月
狭窄性腱鞘炎
狭窄性腱鞘炎は,手の疾患のなかでは頻度が高いです。腱は効果的な手指の運動が生じるように複数の靱帯性腱鞘を通過し,骨から浮き上がらないような構造をしていますが,腱鞘炎では腱自体の肥大や腱鞘の肥厚が原因となって腱の滑走が障害され、疼痛や運動障害が出現します。
ドゥ・ケルバン病
橈骨茎状突起部の第1背側区画における短母指伸筋腱と長母指外転筋腱の狭窄性腱鞘炎です。不慣れな仕事や手の酷使などによって機械的刺激が続くことで生じ,手をよく使用する中年の女性に多いです。
「手首の痛み」として自覚されることが多く,疼痛部位や疼痛を引き起こす動作を尋ねることで診断を行います。橈骨茎状突起部の疼痛があり,局所に圧痛と腫脹を認めます。母指の運動,握り動作,手関節尺屈によって疼痛が強くなります。誘発テストとしては,患者に母指を示指~小指で握らせて手関節を他動尺屈させることによって橈骨茎状突起部の疼痛が誘発される方法がよく知られています。
外固定による安静治療・腱鞘内へのステロイド注射が有効です。頻回の注射や高濃度の薬液は腱断裂をまねく恐れがあるため,頻回の注射は避け,注射後すぐに再発するような場合は手術治療を薦めています。
弾発指
手指の疼痛と機能障害の最も多い原因であり,ばね指とも呼ばれています。慢性的な機械的刺激により,多くは中手指節間(MP)関節掌側の靱帯性腱鞘(A1 pulley)と屈筋腱の大きさが合わなくなり屈筋腱の滑走性が低下し,手指の屈伸の際の「引っかかり」や「ばね現象」を生じるようになります。50歳代の女性に多く、更年期や出産後の育児の時期に見られ、女性ホルモンとの関連も指摘されております。母指が最も多く,次いで中指,環指に多く認めます。また,糖尿病,関節リウマチ,透析患者では多発することが多いです。
治療
一般的に腱鞘内ステロイド注射が有効とされています。ただ腱断裂の恐れがあるため,頻回の注射は避け,注射後短期間で再発するような場合は手術(腱鞘切開術)を薦めています。
参考文献
中島祐子ら MB Orthop.29(11):37-44,2016