肘内障とは
はじめに
肘内障は5歳以下の子どもに多くみられます。手を引っ張られたり、ひねられたりした後に腕を痛がり、動かさなくなります。「肘が抜けた」と言われることがありますが、正確には脱臼ではありません。橈骨頭を包む輪状靭帯が、手を引っ張られることによって橈骨頭からはずれて、広がった腕橈関節内に挟まることが原因と考えられています。
症状・診断
● 典型的な受傷機転として「手をつないでいて転倒しそうになり引っ張った」,「寝返りで上肢を巻き込む」などがよくあるエピソードです。腕全体を自発的に動かさないことが多く、肩や手関節に腫れや痛みがないことを確認し、肘内障を起こしやすい受傷機転をよく聴取することが必要です。
● 肘内障はくり返すことがありますが、成長とともに起こりにくくなります。
治療
肘内障整復
肘を軽く屈曲して母指で強く橈骨頭を押さえながら、前腕を手のひらが下向きになるように回内させるか(回内法)、手のひらが上向きになるように回外させ肘を曲げていきます(回外法)。橈骨頭を押さえている母指にクリックが感じられると整復成功です。通常は一瞬のうちに整復でき、整復されると程なく痛みが消失して肘の運動が可能となります。(バンザイやバイバイの動作が可能となれば整復できていると言っていいと思います。)
初回操作でクリックがない,症状が改善しない場合は初回整復操作と反対動作(初回が回内であれば回外)を行います。
受療機転から肘内障が疑わしい場合でも整復操作が難渋する場合は骨折などを疑い、X線・超音波で確認します。
参考文献
江口佳孝 小児内科 Vol. 51 No. 10,2019‒10
石井秀明 池上博泰 整形外科看護 2018 vol.23 no.11