突然の急激な関節痛、夜も眠れない →石灰が原因かも!?石灰沈着症とは
石灰沈着とは
皮膚や皮下組織、関節包や靱帯などの軟部組織にカルシウムが沈着して生じる疾患です。ほとんどが原因不明ですが、自己免疫疾患や透析などに合併することが知られています。
関節・筋肉・腱に沈着した場合は激しい痛みや運動制限の原因となります。
肩関節(肩石灰性腱炎)によくみられますが、肘や手・股関節や足首・頸椎など全身に発症する可能性があります。
肩石灰性腱炎とは
肩を動かす筋肉の腱(腱板)に石灰(リン酸カルシウム結晶)が沈着することにより,肩峰下滑液包に炎症を起こす疾患です。
リン酸カルシウムの沈着は、遺伝的素因や糖尿病などの代謝性疾患などに伴うことが知られていますが、詳細なメカニズムは不明です。
40~60代の女性に多くみられます。
症状
強い炎症が生じることが多く、激しい痛みのため腕を動かせない、眠れないという人もいます。
一方、約3分の1の方で目立った症状を感じていないという場合があります。
診断
痛みの正体のリン酸カルシウムは肩の中でたまると歯磨き粉の様な物質になり(石灰化)レントゲンやエコーでも白くうつり、石灰化が起きていることを確認します。
治療
とにかく早く痛み(炎症)を抑える必要があり、ステロイド注射を行うことが多いです。また痛み止めや湿布なども併用します。
急性期では、ミルク状のリン酸カルシウムを吸引することもあります。
炎症が強い場合は一度の注射で治りにくいこともあり、その場合は早めに再度受診してください。
お薬として,NSAIDs(ロキソプロフェンなど)のほか,経験的にシメチジン(400mg/日),またはファモチジン(20mg/日)H2ブロッカーが有効とされています。
石灰沈着を引き起こす可能性のある疾患
皮膚筋炎
皮膚筋炎は筋肉内,および皮下の血管炎によって様々な症状をもたらす原因不明の炎症性疾患です。
石灰化は重力や外力を受けるところに多く,膝,肘,臀部によくみられます。
CREST症候群
石灰沈着(calcinosis),Raynaud現象(Raynaud’s phenomenon),食道障害(esophageal dysfunction),手指硬化(sclerodactylia),毛細血管拡張(telangiectasia)を主症状とする結合組織に対する自己免疫疾患です。
透析
カルシウムとリン代謝異常を呈する慢性腎不全,特に長期透析患者に高頻度に石灰化が認められます。
多くは筋肉内に起こり、ほとんどがリン酸カルシウムからなっており,血清リンのコントロール状況と骨代謝が密接に関係しています。
偽痛風
偽痛風は,ピロリン酸カルシウム結晶が関節内に析出し急激な関節炎症状を生じる疾患で,膝関節や手関節によくみられます。
60歳以上で発症することが多く、変形性関節症が主な要因と考えられています。
まとめ
早期に医療機関を受診することを勧めます。
参考文献
仲宗根素子 金谷文則 MB Orthop Vol.32 No.5 2019
日本医事新報 No.4917 2018
永瀬雄一 診断と治療 vol.111 no.6 2023(46)