高齢者に好発する関節炎~関節リウマチとの違い~

リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)とremitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema症候群(RS3PE症候群)は,ともに高齢者(原則として50歳以上)に好発する原因不明のリウマトイド因子陰性の炎症性疾患です。関節リウマチ(RA)と明確に区別することが難しい場合があり、診断に難渋することがあります。

リウマチ性多発筋痛症(PMR)

疫学・症状

高齢者に多く発症し男女比では1:1.5程度でやや女性に多いです。
臨床的特徴は,①高齢者,②急性ないし亜急性の発症③四肢の近位部(特に両側肩関節~上腕と,両側聲部~大腿部)の筋痛,④全身症状(発熱倦怠感,体重減少など)であり,具体的には寝返りが打てない,坐位から立ち上がれないなど,体幹部の運動制限を来します。
特に両肩疹痛は,診断感度の高い症状です。明け方に症状は強く,一時間以上持続する朝のこわばりがあります。全身症状として,発熱全身倦怠感,食欲低下,体重減少,抑齢状態などを呈します。

検査

特異的な検査はなく,非特異的な炎症反応(血清CRP高値と赤沈元進)があり,リウマトイド因子や抗核抗体など自己抗体は原則陰性です。近年,事項の分類基準にも採用されているように,関節エコーにより肩関節や股関節内の腱鞘滑膜炎や滑液包炎がPMRの本体であることが判明し,それらを特定できるようになりました。さらにMRI, FDG-PET/CTなどの画像診断の進歩によって,本症と他のリウマチ性疾患との鑑別がより正確に行えるようになってきました。

診断

2012年に米国リウマチ学会と欧州リウマチ学会が合同で暫定分類基準を作成し,それが現時点ではPMRの診断に利用されています。これはあくまで集団を分類するための基準であり,個々の症例の診断には,他の炎症性疾患(巨細胞性動脈炎や顕微鏡的多発血管炎など),感染症(感染性心内膜炎や腹腔内膿瘍など),悪性腫瘍などとの鑑別を十分行う必要があります。特に腫瘍随伴症候群(paraneoplastic syndrome)としてPMR様の臨床像を呈することがあるため,悪性腫瘍の企身検索を適宜行います。

2012EULAR/ACRによる分類基準

治療

ステロイド(glucocorticoid)が第一選択です。プレドニゾロン(PSL)換算10~20mg/日で開始し,速やかな症状の改善がみられることが多いです。活動性が低下したら漸減します。長期にわたるステロイド薬治療は副作用の問題があります。患者はほとんどが高齢者であり,すでに種々の合併症を有していることが多く,特に骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折,糖尿病の発症や悪化,コレステロール値の上昇とそれらに関連した虚血性心疾患や脳梗塞などの心血管イベント,緑内障などが大きな問題となり得ます。
その他の治療法として,PMR病態にIL-6が深く関わっていることから,IL-6の阻害療法が期待されます。臨床試験ではIL-6阻害薬であるトシリズマブ(TCZ)の有効性が示されており、副作用の懸念が高いステロイド量を減らすことができる結果が示されました。高齢者でステロイドの有害事象が懸念されることが多いPMR患者において,IL-6阻害薬であるTCZは有力な治療戦略となると思われます。

RS3PE症候群

臨床的特徴

①高齢者(elderly)に,
②急性に発症(abrupt onset)する,
③対称性の関節滑膜炎(symmetrical synovitis)で,
④四肢末端(特に手背部)の浮腫を伴い,
⑤検査では強い炎症反応(血清CRP高値・赤沈亢進)とリウマトイド因子陰性(Seronegative)で,
⑥少量~中等量のステロイドによく反応し劇的に改善する(remitting),
予後の良い疾患であります。
腫瘍随伴症候群との関連についてはPMRでもいわれていますが,RS3PE症候群ではその関与が強く示唆されています。

診断

確立された診断基準はなく,前述の臨床症状がそろっている場合に臨床的に診断します。超音波検査では,罹患部位の滑膜炎や腱滑膜炎(伸筋腱に多く見られる)が確認されます。
除外診断が重要で,関節リウマチや乾癬性関節炎などの炎症性疾患をはじめ,感染症や悪性腫瘍には注意が必要です。従って,本症を診断した場合は,これらの炎症性疾患の可能性を調べるとともに,特に全身の悪性腫瘍の有無の検索を可能な限り行うよう努めるべきです。

治療

ステロイドに対する反応は極めて良好で,文献的にも中等量のPSL(平均16mg/日)でよく反応し,免疫抑制薬や抗リウマチ薬などを使用することはほとんどないと報告されています。

関節リウマチ(RA)RS3PE症候群・リウマチ性多発筋痛症(PMR)の比較

参考文献

天野宏一 Nippon Rinsho Vol 77,No 3,2019-3

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