脂質異常症
脂質異常症とは
血液中の中性脂肪やコレステロールなどの脂質の代謝が正常でない状態のことを「脂質異常症」といいます。以前は中性脂肪値が高い、もしくは悪玉であるLDLコレステロール値が高い状態を「高脂血症」と呼んでいましたが、善玉であるHDLコレステロール値が低い状態も含めて、「脂質異常症」と呼ぶようになりました。「脂質異常症」のみでは自覚症状がなく、治療をしない人も少なくありませんが、脂質が増えると動脈硬化へと進展し、心筋梗塞、脳梗塞などの重大な病気の引き金となることがあり、そのため早期治療が望ましいです。
生活習慣との関連
原因として、遺伝的要素、食生活、運動不足、ストレスなどが関係しています。脂肪の多い肉や卵、バター、チーズ、インスタント食品などの食べ過ぎはコレステロール値が高くなり、お菓子の食べ過ぎ、お酒の飲み過ぎなどでは、中性脂肪値が上がります。大半の脂質異常症は成人以降の食生活、運動不足、体重増加などが原因となっており、まさに「生活習慣病」の典型的な疾患となります。
症状
脂質異常症から起こる自覚症状はほぼ皆無で、ほとんどの場合は血液検査で数値の異常を指摘されて気づくことが多いです。甲状腺機能低下症、副腎皮質ホルモンの分泌異常、ステロイド治療、糖尿病、腎臓病、肝臓病などによって脂質異常症を合併することがあります。
診断
脂質異常症と判断される基準は、LDLコレステロールが140㎎/dl以上(高LDLコレステロール血症)、HDLコレステロールが40㎎/dl未満(低HDLコレステロール血症)、中性脂肪が150㎎/dl以上(高中性脂肪血症)のいずれかです。中性脂肪は食後数時間かけて上昇するため、正確な数値を見るためには食事を抜いた空腹時状態で採血するのが望ましいです。
治療
まずは食生活の改善を図ります。動物性ではなく魚や植物性の油を多く摂ること、コレステロールの吸収を抑える食物繊維を多く摂ること、アルコールを控えめにすることなどです。またウォーキング、水泳、サイクリングなど1日30分以上の有酸素運動も効果的です。これら生活習慣の改善によって数値が改善しない場合には、内服薬による治療を行います。既に動脈硬化や糖尿病などを合併している場合は早期改善を必要とするため、内服治療を開始します。
予防が大切
脂質異常症は自覚症状がないため、定期的に健康診断を受けることが大切です。また日頃から食生活に気を付けて、運動習慣を身につけて健康的な生活を送るように心がけましょう。
参考文献
志鎌明人 島野仁 診断と治療 vol.100 no.12 2012(32)
松原 薫 橋本 尚武 栄養-評価と治療vol.26 no.3